『ごんごんと風にころがる雲をみた。』
目黒それでは『ごんごんと風にころがる雲をみた。』。2007年6月に柏艫社から出て、2010年11月に角川文庫と。これはいろいろなところに書いたものをまとめたもので、その初出を書いておくと、
- 「2004年ANAカレンダー」
- 『新シルクロードの旅 第2巻』(講談社)
- 『週刊シルクロード紀行 1・2』(朝日新聞社)
- 「はれ予報(しんきんカード)」
- 「季刊HABA」(ハーバー研究所)
- 「POWER」(住友建機)
- 「天上大風」(立風書房)
- 「週刊金曜日」
- 「ロケーションジャパン」(地域活性プランニング)
- 「日本経済新聞」
書き下ろしも入っているんだけど、つまりは寄せ集めだね。柏艫社から単行本の話があって、それまで本になっていない原稿を渡して、向こうがまとめたと。そういう経緯だったと思う。一度読んだような気がする話が多いのはそういうことだねたぶん。
椎名そうだな。
目黒細かなことを拾っていくと、昔のプロレスによくあった「六十一分三本勝負」の「六十一分」とは何か、という話が出てきて、この本の中では正解が出てないんだけど、この真意は不明なの?
椎名「六十分」でもいいのになぜ「六十一分」なのか。いまでも、どうしてなのかがわからない。
目黒「六十分」よりも「六十一分」のほうが、なんとなく凄そうな感じがするからじゃないかなあ。そういえば「一分の謎」が競馬にもあるんだよ。たとえば9Rが2時発走だとするよね。競馬新聞にはそう書いてある。ところが当日になって「2時1分発走」に変更になるの。しかも、しばしばなんだよ。この意味がわからない。
椎名興味深いね(笑)。
目黒中国の玉門関というところにいく話も興味深い。昔の関所の廃墟があるだけなんだけど、観光地になっていて、囲いの中に入るのに1人100元取られる。おかしいなと思って領収書を求めると、なんだか態度が怪しい。しばらくすると追いかけてきて、100元を返してきた。
椎名つまり勝手に徴収しているだけだから国に訴えられたら困るんだよ。
目黒100元は大きいよね。サラリーマンの月給が700元というから、7人から徴収すれば月給分を稼いじゃう。
椎名少し前の話だけどね。
目黒ええとこれは、2004年に敦煌に行ったときの話です。あと、感動的なのは、南米の無人島でキャンプしていたときの話。大きな鮭が川を遡上してきたので三匹ほど取ってみんなで食べた話を週刊誌に書いたら、漁業の研究をしている学者から手紙が届いた。その方は十年ほど前、鮭の稚魚の放流実験をしたが、なかなか成果を得られずに諦めて帰国したと。だからそれは間違いなく私たちが放流した鮭の子孫です、涙が出るほど感動しましたと手紙に書かれていた。いい話だよねえ。
椎名おいしかったよ(笑)。
目黒あとね、日本のウルチ米の一番すごいところは、ご飯だけでがっしりぎょっと固まることで、つまり「おにぎり」を作ることが出来ると書いてある。ということは、他の国の米ではおにぎりが出来ないの?
椎名そうだよ、ぱらぱらだから。その代わり、インドカレーのようなものには向こうの米のほうが合う。
目黒ぱらぱらなら、チャーハンにもそっちのほうが合うんじゃないの?
椎名そうだよ。
目黒すっごく細かなことを言っていい?
椎名いいよ(笑)。
目黒単行本の171ページ、文庫本の155ページに、そりを引く犬の写真があって、そこに「元気なうちはそりを引くのが楽しそうだが」というキャッチがついている。じゃあ元気でなくなったらどういうふうになるのか。写真でも本文でも語られていないんだよ。どうなるの?
椎名ぐったりするんだよ(笑)。
目黒まあ、そうだろうけどさ。
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